EOQ(経済的発注量)とは、全体コストを最小化する最適な発注サイズのことです。これは、相反する動きをする2つのコストのバランスを取るものです。頻繁に発注すると、その都度発生する手間や費用がかさみます。一方で、一度に大量に発注すると、在庫を抱えるためのコストが増加します。
EOQは、これら2つのコストの合計が最小となるポイントを見つけ出します。これは「一度にどれだけ購入すべきか」という問いに対する答えであり、発注点が示す「いつ購入すべきか」という問いとは異なるものです。
EOQを分かりやすく解説
ある商品を年間1,200個使用すると仮定します。
一度に1,200個すべてを発注する場合、年間の発注回数は1回で済みます。発注コストは非常に少なくなります。しかし、年間を通じて平均600個の在庫を抱えることになり、資金とスペースが固定化されるほか、保管、保険、荷役のコストが発生します。
月に100個ずつ発注する場合、平均在庫は50個に抑えられ、保管コストは大幅に削減されます。しかし、年間に12回発注することになり、その都度、事務処理、配送料、入荷作業が発生します。
これら両極端なケースの中間に、2つのコストを合計した額が最小となる発注サイズが存在します。それがEOQです。
重要な洞察として、総コスト曲線は最小値付近では非常に緩やかであるという点が挙げられます。正確なEOQから20%程度ずれたとしても、コストの増加は通常数パーセント程度です。そのため、EOQは厳密な指示書としてではなく、現状の発注サイズが大きく外れていないかを確認するための「目安」として扱うのが最適です。1個単位まで厳密に計算して悩む必要はありません。
EOQの計算式
EOQ = √ ( (2 × D × S) ÷ H )
あるいは、一般的に用いられる表記では: EOQ = √(2DS/H)
D — 年間需要。 1年間に使用または販売するユニット数。目標値ではなく、実際の販売履歴から算出してください。また、在庫切れの期間は除外してください。在庫切れ期間の売上は、需要ではなく供給能力を反映しているためです。
S — 1回あたりの発注コスト。 サイズに関係なく、1回の発注を行い、受け入れるためにかかるコストです。ここが最も間違いやすい項目です。発注・追跡にかかる購買担当者の時間、固定の配送・運賃、入荷時の検品・棚入れ作業、請求書処理などが含まれます。商品自体の購入価格は含まれません。
H — ユニットあたりの年間保管コスト。 1ユニットを1年間保管するためにかかるコストです。通常はユニットコストに対するパーセンテージで計算され、資本コスト、保管料、保険、荷役、棚卸減耗、陳腐化リスクを含めると一般的に20〜30%となります。例えば、20ドルの商品で保管率が25%の場合、H = 5ドルとなります。詳細は在庫の保管コストで解説しています。
この計算式から欠けているものに注目してください。それは商品の購入価格です。このモデルでは、発注サイズに関わらず年間の購入数量は一定であるため、購入コストはどの選択肢でも同一であり、答えに影響を与えないため計算式には含まれません。ただし、Hを通じて間接的に影響します。
計算例
ある企業が収納ボックスを販売しているとします。数値は以下の通りです:
- 年間販売数:2,400個
- 1回あたりの発注・受入コスト:約75ドル(購買担当者の作業時間、固定の配送費40ドル、入荷作業費の合計)
- ボックスの仕入価格:12ドル、年間保管率:25%
ステップ1 — Dを確定する。 年間需要 = 2,400個。
ステップ2 — Sを確定する。 1回あたりの発注コスト = 75ドル。
ステップ3 — Hを計算する。 ユニットあたりの年間保管コスト = 12ドル × 25% = 3.00ドル。
ステップ4 — 計算式に当てはめる。
EOQ = √( (2 × 2,400 × 75) ÷ 3.00 ) EOQ = √( 360,000 ÷ 3.00 ) EOQ = √120,000 EOQ = 346個
ステップ5 — 実務上の意味を検討する。
- 年間発注回数 = 2,400 ÷ 346 = 6.9回(約7〜8週間に1回)
- 平均在庫数 = 346 ÷ 2 = 173個(在庫金額にして2,076ドル)
- 年間発注コスト = 6.9 × 75ドル = 518ドル
- 年間保管コスト = 173 × 3.00ドル = 519ドル
2つのコストがほぼ同額になっていることに注目してください。これは偶然ではありません。EOQでは常にこの2つが等しくなるため、計算の検算として役立ちます。
関連総コスト = 年間1,037ドル
ステップ6 — 代替案と比較する。 ここがこの分析の真価を発揮する部分です。
| 発注サイズ | 年間発注回数 | 発注コスト | 平均在庫 | 保管コスト | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 100 | 24.0 | 1,800ドル | 50 | 150ドル | 1,950ドル |
| 200 | 12.0 | 900ドル | 100 | 300ドル | 1,200ドル |
| 346 (EOQ) | 6.9 | 518ドル | 173 | 519ドル | 1,037ドル |
| 600 | 4.0 | 300ドル | 300 | 900ドル | 1,200ドル |
| 1,200 | 2.0 | 150ドル | 600 | 1,800ドル | 1,950ドル |
2つのことが分かります。EOQが最も安価であること、そして最小値付近のコスト曲線は非常に平坦であることです。346個ではなく200個や600個を発注しても、年間コストの増加は163ドル程度であり、この規模のビジネスでは誤差の範囲内です。サプライヤーのケース単位が250個であったり、最小発注数が500個であったりする場合は、それに従っても問題ありません。
EOQ計算ツール
あらゆる商品で試してみてください。計算自体はすぐに終わりますが、SとHを正確に算出することこそが本質的な作業です。
| ステップ | 項目 | 数値 |
|---|---|---|
| 1 | D — 過去12ヶ月の販売数または使用数 | |
| 2 | 1回あたりの購買時間、固定運賃、入荷作業費、請求書処理費 | |
| 3 | S — 1回あたりの合計発注コスト(ステップ2の合計) | |
| 4 | 商品のユニットコスト | |
| 5 | 年間保管率(通常20〜30%) | |
| 6 | H — ステップ4 × ステップ5 | |
| 7 | 2 × D × S | |
| 8 | ステップ7 ÷ H | |
| 9 | EOQ — ステップ8の平方根 |
参考用計算例: D = 2,400, S = 75ドル, H = 3.00ドル。(2 × 2,400 × 75) = 360,000。360,000 ÷ 3 = 120,000。√120,000 = 346個。
最後に、現実と照らし合わせて妥当性を確認してください:
- サプライヤーの最小発注数量(MOQ)と、自社の保管スペースの範囲内に収まっていますか?
- ケース単位、層単位、パレット単位など、実用的な数量に丸められますか?実用的な単位に丸めても、コスト曲線が平坦であるため、損失はほとんどありません。
- 年間発注回数は妥当ですか?もし40回になるならSが過小評価されていないか、0.8回になるならHが過小評価されていないかを確認してください。
- より大量に購入することでボリュームディスカウントが得られる場合、保管コストの増加分を上回るメリットがありますか?基本的な計算式では割引を考慮できないため、別途検討してください。
EOQが示すもの、そしてそれが重要な理由
EOQは、通常は直感で判断されているトレードオフを数値化します。 多くの発注量は、習慣やサプライヤーのケースサイズ、あるいは何年も前に誰かが最初に行った発注に基づいて決められています。EOQは、その代替案に対して明確な数値を提示します。
EOQは、過小評価されがちな発注コストを明らかにします。 非常に頻繁に発注を行う企業は、購買や入荷作業にかかる各発注の真のコストを計算していないことがよくあります。S(発注コスト)を算出することは、EOQそのものを計算することよりも多くの気づきを与えてくれます。
EOQは、過小評価されがちな保管コストを明らかにします。 同様に、数量割引を得るために大量購入する企業は、その後に続く1年間の保管コストを正確に算出していることは稀です。H(保管コスト)をユニットコストの25%として算出してみると、大量購入に対する考え方が変わることがよくあります。
EOQは、サプライヤーの割引提案に対して論理的な回答を可能にします。 「2倍購入すれば4%割引」という提案は、受け入れる前に検証できます。もし追加の保管コストが割引額を上回るなら、その取引はコスト削減にはなりません。
EOQは、発注リズムのインプットとなります。 年間需要をEOQで割ることで年間の発注回数が算出され、そこから購買担当者がその品目をどの程度の頻度で見直すべきかが分かります。
前提条件と限界
このモデルは1世紀近く前に考案されたものであり、現実には完全には当てはまらない前提に基づいています。どこでモデルが破綻するかを知っておくことが、モデルを正しく活用することと、誤った方向に導かれることの分かれ道となります。
一定かつ既知の需要を前提としています。 現実の需要は季節変動があり、トレンドがあり、不確実です。急激な季節的ピークがある製品にとって、単一の年間EOQはほとんど意味をなしません。季節ごとに個別に計算するか、あるいは計算しない方が賢明です。
サイズに関係なく一定の発注コストを前提としています。 現実には、輸送コストはボリュームに応じて変動することが多く、複数の製品を1回の配送にまとめることで、発注あたりのコストは大きく変わります。
ユニットあたりの保管コストが一定であると前提しています。 保管コストは滑らかに変化するのではなく、段階的に跳ね上がります。パレットの保管場所が余分に必要になったり、追加のスペースを借りる必要が生じたりするような数量では、線形モデルが示唆するよりもはるかに高いコストがかかります。
数量割引を無視しています。 基本的な計算式は1つの購入価格を前提としています。割引の境界線が存在する場合、各境界点での総コストをEOQの回答と個別に比較する必要があります。これが最も一般的な実務上のギャップです。
即時の補充と欠品がないことを前提としています。 リードタイムも変動もなく、在庫切れの可能性もないという前提です。安全在庫や発注点は、まさにこれらの前提が誤りであるために存在しており、EOQの計算範囲外に位置しています。
H(保管コスト)に組み込んだ要素以外、腐敗や陳腐化を無視しています。 使用期限が短い商品や流行の移り変わりが激しい商品の場合、真の制約はコストではなく賞味期限や陳腐化です。
各製品を独立して扱います。 実際には、1つのサプライヤーから複数の品目を1回の配送で発注することが多く、これが経済性を大きく変えます。10品目で配送コストを分担すれば、品目あたりのSは大幅に小さくなります。
資本とスペースが無制限であると前提しています。 どちらも現実には制限があり、計算式の結果に関わらず、それらが上限となる可能性があります。
これらを踏まえた上での活用方法。 EOQを指示書としてではなく、診断ツールとして扱ってください。価値の高い主要品目に対してEOQを実行します。現在の発注量と計算結果が近い場合は、そのままにしておきます。もし計算結果が数倍大きい、あるいは小さい場合は調査してください。モデルが「検討する価値がある」と教えてくれているのであり、それこそがこのモデルが提供できる最大限の価値です。
EOQと発注点、安全在庫、保管コストの関係
4つの数値はそれぞれ異なる問いに答えるものであり、順序立てて相互に依存しています。
| 回答する問い | 次のステップへの入力 | |
|---|---|---|
| 保管コスト | 1ユニットを1年間保管するコストは? | EOQ式のH |
| 安全在庫 | 不測の事態に対するバッファはどれくらい必要か? | 発注点 |
| 発注点 | いつ発注すべきか? | 行動のトリガー |
| EOQ | どれくらい発注すべきか? | 発注数量 |
作業の順序は、まず保管コストを計算することです。EOQにはそれが必要だからです。次に、需要とリードタイムの変動から安全在庫のサイズを決定します。そして、リードタイム中の需要に安全在庫を加えて発注点を構築します。最後に、発注点に達した際に発注する数量をEOQで設定します。
価値の高い主要品目についてこれら4つを整備すれば、機能的な補充システムの核が出来上がります。動きの遅いロングテール商品にまでこれらを広げても、労力に見合う成果はほとんど得られません。そうした商品には、単純な最小・最大在庫レベルの方が適しています。
詳細はこちら
- 発注点とは — 「どれくらい」ではなく「いつ」発注するか。
- 安全在庫とは — EOQでは考慮されないバッファ。
- 在庫の保管コスト — Hを正しく計算する方法。
- 在庫管理手法 — 代替案の中でのEOQの位置づけ。
- 過剰在庫とは — 発注量を割引だけで決めた場合に起こること。
- 在庫回転率とは — 発注量が最も影響を与える指標。
要点まとめ
経済的発注量(EOQ)とは、発注コストと保管コストの合計が最小となる発注サイズであり、√(2DS/H)で求められます。その真の価値は診断にあります。コスト曲線は最適解の周辺では平坦であるため、数量を1単位単位で厳密に設定するのではなく、現在の発注サイズが大きく外れている品目を見つけるために活用してください。
よくある質問
経済的発注量(EOQ)とは簡単に言うと何ですか? 発注コストと、それによって生じる在庫の保管コストのバランスを取り、全体として最もコストが低くなる発注サイズのことです。発注頻度が高すぎれば発注コストが増え、発注量が多すぎれば保管コストが増えます。
EOQの計算式は何ですか? EOQ = √(2DS/H) です。Dは年間需要(単位)、Sは1回あたりの発注・受入コスト、Hは1ユニットを1年間保管するコストです。商品の購入価格は、どのような発注サイズを選んでも変わらないため、式には含まれません。
EOQの例を教えてください。 年間需要が2,400ユニット、発注コストが$75、1ユニットあたりの年間保管コストが$3.00の場合:(2 × 2,400 × 75) = 360,000。これを3で割ると120,000。その平方根は346ユニットとなります。つまり、年間約7回発注し、平均在庫は173ユニットとなります。
EOQの限界は何ですか? 一定かつ既知の需要、固定された発注コスト、一定のユニット保管コスト、数量割引なし、即時補充、欠品なしを前提としています。これらはどれも完全には真実ではありません。また、各製品を独立して扱うため、複数の品目を1回の配送にまとめるメリットを過小評価してしまいます。
EOQと発注点の違いは何ですか? EOQは「どれくらい」発注するかを教え、発注点は「いつ」発注するかを教えます。これらは補完的な関係にあり、発注点がトリガーとなって発注が行われ、EOQがその発注書に記載する数量を決定します。
EOQは数量割引を考慮しますか? 基本形では考慮しません。サプライヤーが価格の段階的割引を提供している場合は、各割引ポイントでの年間総コスト(購入コスト+発注コスト+保管コスト)をEOQの総コストと比較し、最も低いものを選びます。多くの場合、追加の保管コストを考慮すると割引のメリットは相殺されます。
EOQは今でも有効ですか? 診断ツールとしては有効です。総コスト曲線は最小値付近では平坦であるため、正確な数量を処方するのには向きませんが、現在の発注サイズが本来あるべき姿から大きく外れている品目を特定するのには非常に優れています。そのように使えば、今でも十分に役立ちます。
発注あたりのコストを計算するにはどうすればよいですか? 発注および追跡にかかる購買担当者の時間、固定の運賃や配送手数料、入荷・検品・棚入れにかかる作業コスト、請求書処理コストを合計します。商品そのもののコストは除外し、発注サイズに応じて変動するコストではなく、発注ごとに固定で発生するコストのみを含めてください。
